出発点
出動件数の増加 → 病院到着時間の長期化
💡 誤通報・搬送拒否など「不適切利用」が増加し、救急車が本当に必要な事案に対応しにくくなっている。
→ しかし、それだけが原因なのか?
傷病程度×年齢区分の分布
軽症は高齢者が多く、重症は成人中心
高齢者
成人
少年
乳幼児
不搬送理由別件数(上位)
「拒否」「辞退」が圧倒的多数
🔍 不適切利用以外にも、到着後の搬送に時間がかかる構造的問題があるのでは?
区ごとの病院到着所要時間(平均)
西区 36.8分、全区平均 33.96分を大きく上回る
← 中央区(最短) 西区(最長)→
西区に着目した理由
病院到着が長い西区と、類似条件の東区を比較
| 指標 | 東区 | 西区 |
| 病院到着時間 | 33.9分 | 36.8分 |
| 現場到着時間 | 8.90分 | 9.09分 |
| 可住地面積 | ≈同程度 | ≈同程度 |
| 道路延長 | ≈同程度 | ≈同程度 |
| 人口密度 | ≈同程度 | ≈同程度 |
✅ 現場到着時間・地理条件はほぼ同じなのに、病院到着時間に差がある。→ 現場到着以降(現場滞在+移動)に原因がある。
時間構成の分解
東区:現場到着が長いが搬送が短い
西区:両方が長い
現場以降の時間(区別平均)
西区の現場滞在+移動が最長 27.8分
西区は23分超の事例が59.5%と全区で最高。次点の博多区(54.2%)より約5pt高い。
現場到着割合 ヒートマップ(時間帯×区)
東区は朝・昼に現場到着割合が高い(0.28)
中央
南
博多
城南
早良
東
西
夜
0.25
0.25
0.22
0.24
0.25
0.27
0.25
昼
0.26
0.26
0.23
0.25
0.26
0.28
0.26
朝
0.26
0.26
0.23
0.25
0.26
0.28
0.26
深夜
0.25
0.25
0.22
0.23
0.24
0.25
0.23
東区は現場到着の割合が高いが現場以降が短い。西区はどちらも長い → 別の要因が存在。
時間帯・傷病程度の影響
深夜は長く・重症は短い傾向
→ 西区の説明にはならない
🌙
深夜(0-5時)は現場以降が長い傾向
深夜帯の23分超割合 55.2%(最高)。しかし、東西区の時間帯構成はほぼ同一 → 説明できない。
🚨
重症ほど現場以降の時間が短い(軽症51%超 vs 重症33%)
東西区の傷病程度の構成比に大きな差はない → これも西区の説明にならない。
🏥
疾病分類の構成比も東西で差なし
各疾病による時間差はあるが、東区・西区間の疾病構成は類似 → やはり説明できない。
管内・管外搬送の影響
管外搬送は長いが西区は管外がほぼゼロ
→ 説明にならない
| 区分 | 23分超割合 | 構成比(全体) |
| 管外(全体) | 49.8% | 約2-3% |
| 管内(全体) | 50.0% | 約97% |
| 西区・管外 | 75.9% | 0.2% ← ほぼゼロ |
| 西区・管内 | 59.3% | 99.8% |
西区の管外搬送は全体の0.2%しかなく、管外の多さが理由ではない。
管内搬送だけで59.3%が23分超 → 管内の病院受け入れ自体に課題がある可能性。
病院規模の仮説
東区:病院数は少ないが規模大
西区:病院多いが規模小?
規模小?
西区:病院多いが小規模
→ 受け入れ調整が複雑?
病床数が同じでも病院数が少ない東区は「大型病院への集中搬送」が可能。受け入れ態勢が整いやすい。
分析①:中央値(32分)以下のケース
現場到着時間が最大の規定因。重症ほど早い(逆転)
| 予測変数 | 推定値 | p値 | 有意 |
| 切片 | 21.20 | <.001 | ● |
| 現場到着所要時間 | 0.667 | <.001 | ★ |
| 年齢区分 | 0.172 | <.001 | ● |
| 傷病程度区分 | −0.564 | <.001 | ● |
| 市町村コード | −0.062 | <.001 | ● |
| 曜日コード | −0.014 | <.001 | ● |
| 病院管内外 | 0.051 | 0.129 | ✕ |
重症になるほど到着時間が短い(−0.564)。管外の影響は非有意 = 管外搬送が少ないから。
分析②:中央値(32分)以上のケース(搬送困難事例)
管外搬送が+2.46分。重症ほどかえって時間がかかる(正転)
| 予測変数 | 推定値 | p値 | 有意 |
| 切片 | 33.47 | <.001 | ● |
| 現場到着所要時間 | 0.843 | <.001 | ★ |
| 年齢区分 | 0.442 | <.001 | ● |
| 傷病程度区分 | +0.244 | <.001 | 🔴 |
| 市町村コード | −0.036 | 0.017 | ● |
| 曜日コード | 0.027 | 0.055 | △ |
| 病院管内外区分 | +2.460 | <.001 | 🔴 |
長時間搬送では重症ほど時間がかかる(逆転)。受け入れ先が見つからず管外搬送になると+2.46分。受け入れ先の決定プロセスにボトルネックが存在する。
分析のまとめと提言
西区の搬送時間長期化は「受け入れ先決定の非効率」が主因。システム的介入が必要。
01
受け入れ先スムーズ化システムの構築
重症患者ほど到着時間が長くなる(管外+2.46分)ことから、受け入れ病院の事前マッチング・情報共有システムの整備が最優先課題。救急車から病院への情報連携を自動化。
最重要課題
02
西区における病院機能の強化・集約化
東区(少病院・大規模)は受け入れが迅速。西区は多数の小規模病院が分散している可能性がある。救急対応可能病院の機能集約や、重症患者対応病院の指定・連携強化が有効と考えられる。
地域的介入
03
今後の調査課題:区ごとの救急車台数データ
区ごとの救急車保有台数データが未取得のため、資源不足の仮説を検証できなかった。台数・稼働状況のデータ取得により、さらなる要因分析が可能となる。重回帰の推定値も参照価値がある。
データ課題
分析の核心
不適切利用の削減だけでは不十分。
搬送困難事例における「受け入れ先決定の遅れ」という構造的問題への介入が、救急医療の効率化に直結する。