PBL最終発表 — えんがわ

搬送時間の長期化 事例分析と介入可能性

福岡市救急データ 50万件
北浦・岡・滝本・今西・田浦
1問題提起
2区別の病院到着時間
3東区 vs 西区の比較
4要因の絞り込み
5重回帰分析
6結論・提言
① 問題提起 — 非効率の原因は「不適切利用」だけか?
出動件数の増加 → 病院到着時間の長期化
50万
福岡市 救急出動(分析対象)
33.96
病院到着所要時間(平均)
💡 誤通報・搬送拒否など「不適切利用」が増加し、救急車が本当に必要な事案に対応しにくくなっている。
→ しかし、それだけが原因なのか?
軽症は高齢者が多く、重症は成人中心
軽症
高齢多
重症
成人多
高齢者 成人 少年 乳幼児
「拒否」「辞退」が圧倒的多数
拒否
約26,000件
辞退(到着後)
約21,000件
その他
約6,000
明確な死亡
約4,000
誤報いたずら
約1,500
🔍 不適切利用以外にも、到着後の搬送に時間がかかる構造的問題があるのでは?
② 区別の病院到着時間 — 西区が突出して長い
西区 36.8分、全区平均 33.96分を大きく上回る
西区
36.8分
36.8分
城南区
34.3分
34.3分
博多区
34.0分
34.0分
東区
33.9分
33.9分
南区
33.4分
33.4分
早良区
33.3分
33.3分
中央区
32.0分
32.0分
← 中央区(最短)    西区(最長)→
病院到着が長い西区と、類似条件の東区を比較
指標東区西区
病院到着時間33.9分36.8分
現場到着時間8.90分9.09分
可住地面積≈同程度≈同程度
道路延長≈同程度≈同程度
人口密度≈同程度≈同程度
✅ 現場到着時間・地理条件はほぼ同じなのに、病院到着時間に差がある。→ 現場到着以降(現場滞在+移動)に原因がある。
③ 東区 vs 西区 — 時間構造の違い
東区:現場到着が長いが搬送が短い
西区:両方が長い
東区
現場8.9分
現場以降25.0分
合計
33.9分
西区
現場9.1分
現場以降27.8分
合計
36.8分
現場到着時間 東区:現場以降 西区:現場以降
西区の現場滞在+移動が最長 27.8分
西区
27.8分
27.8
博多区
26.6分
26.6
城南区
26.2分
26.2
南区
25.3分
25.3
早良区
25.1分
25.1
東区
25.0分
25.0
中央区
24.3分
24.3
西区は23分超の事例が59.5%と全区で最高。次点の博多区(54.2%)より約5pt高い。
東区は朝・昼に現場到着割合が高い(0.28)
中央
博多
城南
早良
西
0.25
0.25
0.22
0.24
0.25
0.27
0.25
0.26
0.26
0.23
0.25
0.26
0.28
0.26
0.26
0.26
0.23
0.25
0.26
0.28
0.26
深夜
0.25
0.25
0.22
0.23
0.24
0.25
0.23
東区は現場到着の割合が高いが現場以降が短い。西区はどちらも長い → 別の要因が存在。
④ 要因の絞り込み — 時間帯・傷病程度・管内管外を検証
深夜は長く・重症は短い傾向
→ 西区の説明にはならない
🌙
深夜(0-5時)は現場以降が長い傾向
深夜帯の23分超割合 55.2%(最高)。しかし、東西区の時間帯構成はほぼ同一 → 説明できない。
🚨
重症ほど現場以降の時間が短い(軽症51%超 vs 重症33%)
東西区の傷病程度の構成比に大きな差はない → これも西区の説明にならない。
🏥
疾病分類の構成比も東西で差なし
各疾病による時間差はあるが、東区・西区間の疾病構成は類似 → やはり説明できない。
管外搬送は長いが西区は管外がほぼゼロ
→ 説明にならない
区分23分超割合構成比(全体)
管外(全体)49.8%約2-3%
管内(全体)50.0%約97%
西区・管外75.9%0.2% ← ほぼゼロ
西区・管内59.3%99.8%
西区の管外搬送は全体の0.2%しかなく、管外の多さが理由ではない
管内搬送だけで59.3%が23分超 → 管内の病院受け入れ自体に課題がある可能性。
東区:病院数は少ないが規模大
西区:病院多いが規模小?
規模大
東区:病院少なく大規模
→ 受け入れ迅速
規模小?
西区:病院多いが小規模
→ 受け入れ調整が複雑?
同程度
人口あたり病床数
(東区 vs 西区)
東区少
病院数
→ 東区の方が大規模病院
病床数が同じでも病院数が少ない東区は「大型病院への集中搬送」が可能。受け入れ態勢が整いやすい。
⑤ 重回帰分析 — 病院到着時間の決定要因
現場到着時間が最大の規定因。重症ほど早い(逆転)
予測変数推定値p値有意
切片21.20<.001
現場到着所要時間0.667<.001
年齢区分0.172<.001
傷病程度区分−0.564<.001
市町村コード−0.062<.001
曜日コード−0.014<.001
病院管内外0.0510.129
重症になるほど到着時間が短い(−0.564)。管外の影響は非有意 = 管外搬送が少ないから。
管外搬送が+2.46分。重症ほどかえって時間がかかる(正転)
予測変数推定値p値有意
切片33.47<.001
現場到着所要時間0.843<.001
年齢区分0.442<.001
傷病程度区分+0.244<.001🔴
市町村コード−0.0360.017
曜日コード0.0270.055
病院管内外区分+2.460<.001🔴
長時間搬送では重症ほど時間がかかる(逆転)。受け入れ先が見つからず管外搬送になると+2.46分。受け入れ先の決定プロセスにボトルネックが存在する。
⑥ 結論と今後の改善提言
西区の搬送時間長期化は「受け入れ先決定の非効率」が主因。システム的介入が必要。
01
受け入れ先スムーズ化システムの構築
重症患者ほど到着時間が長くなる(管外+2.46分)ことから、受け入れ病院の事前マッチング・情報共有システムの整備が最優先課題。救急車から病院への情報連携を自動化。
最重要課題
02
西区における病院機能の強化・集約化
東区(少病院・大規模)は受け入れが迅速。西区は多数の小規模病院が分散している可能性がある。救急対応可能病院の機能集約や、重症患者対応病院の指定・連携強化が有効と考えられる。
地域的介入
03
今後の調査課題:区ごとの救急車台数データ
区ごとの救急車保有台数データが未取得のため、資源不足の仮説を検証できなかった。台数・稼働状況のデータ取得により、さらなる要因分析が可能となる。重回帰の推定値も参照価値がある。
データ課題
分析の核心
不適切利用の削減だけでは不十分。
搬送困難事例における「受け入れ先決定の遅れ」という構造的問題への介入が、救急医療の効率化に直結する。
+2.46
管外搬送による
追加所要時間