PBL最終発表 — 軽症ジャッチメント

軽症者搬送の詳細分析と
オンライン診療のブラッシュアップ提案

福岡市救急データ 50万件
有田・マリノス・佐藤・眞田・中尾・向川・島本
1問題提起
2軽症の規模
3緊急度の過剰評価
4試算①(浜松市データ)
5オンライン診療の実績
6試算②(旭川市モデル)
7提案・今後の課題
① 問題提起 — 救急出動義務と「軽症でも出動せざるを得ない」ジレンマ
119番を受けたら出動義務がある
⚖️
救急業務実施基準 第15条
「救急事故が発生した旨の通報を受けたときは、直ちに所要の救急隊を出動させなければならない」
💡 119番だけで「法的救急事故か否か」を正確に判断するのは困難。万一の判断ミスが人命に関わるため、軽症でも出動するのが実情。
出動件数の増加 → 真に必要な人が救えない
軽症でも出動せざるを得ない
判断材料が乏しいまま出動 → 軽症判明 → 救急車が戻る
救急リソースが不足
真に緊急度の高い傷病者への対応が遅れる
軽症者搬送の削減で救急リソースを最適配分
最終目標
救急医療を必要とする人が、
必要なときに救急医療を受けられる
具体的目標:軽症者への出動に着目し、オンライン診療との連携でリソースの無駄を削減する。
② 軽症の規模 + ③ 緊急度判定の変化(浜松市データ)
搬送の45%が「軽症」= 入院不要
軽症 45%
軽症 45%(約197,500件)
中等症 51%
重症 4%
軽症=入院不要の傷病者が全搬送の約半数近くを占めている。これを削減できれば大きなリソース節約になる。
119番時は「緊急」46%だが、医師が診ると「低緊急+非緊急」が48%に
119番通報時
低G 4.3%
準Y 28.8%
緊R3 20.6%
緊R2 46.1%
R1
100%
救急現場到着
低G 7.7%
準Y 38%
緊 16.9%
緑↑ 25.5%
R1 12%
100%
医師による最終判定
非緊W 6.7%
低緊G 41.5%
準緊Y 40.7%
緊R 11.1%
100%
緊急(R) 準緊急(Y) 低緊急(G) 非緊急(W)
通報時は「緊急(R)」66.7%だが、医師が診ると「低緊急+非緊急」が48.2%に達する。通報段階での過剰評価が大きく、事前の緊急度判定で搬送を回避できる余地がある。
④ 試算① — 浜松市データを福岡市(年間100,181件)に適用
「非緊急」または「低緊急」と判定された件数を推定
カテゴリ割合推定件数
医師診断:非緊急(W)6.7%6,712件
医師診断:非緊急+低緊急48.2%48,287件
出動費用は1件あたり45,000円で試算。現場・病院到着時間は50万件データの平均値より算出。
非緊急のみ削減でも3億円超、非+低緊急なら21億円超
シナリオ削減件数出動費用削減現場到着時間病院到着時間
非緊急のみ 6,712件 3.0億円 約38日 約149日
非+低緊急 48,287件 21.7億円 約275日 約1,073日
低緊急まで含めた介入で年間21億円超の費用削減と、救急隊員の現場稼働275日分の解放が見込める。
⑤ オンライン診療の実績 — 旭川市の実証実験(2023年11〜2024年1月)
119番受付と同時にオンライン診療を並行実施 → Uターン率44.3%
119番
通報
救急隊
出動
+
📱 オンライン
診療を並行実施
✅ 解決 → Uターン
🚨 緊急 → そのまま搬送
44.3%
搬送Uターン率(全体)
34.3%
オンライン診療で完結
10.0%
救急車以外で受診
コロナ患者からの通報限定の実証だが、44.3%のUターンという明確な効果。オンライン診療による緊急度の早期判定が搬送削減に直結することが実証された。
視覚情報から非緊急性を判断できるか
🎥
ビデオ通話による症状確認
旭川市の実証ではビデオ通話で患者の状態を医師が確認。外傷・外科系は特に視覚的に判断しやすい。
⚖️
法的ハードル:出動義務との整合
119番受付後に「並行してオンライン診療」を行う形式により、出動義務を満たしつつ効率化が可能。
🏙️
コロナ禍特有 → 汎用化が次の課題
旭川市の実証はコロナ患者限定。外科系軽症など他のケースへの拡張が本提案の焦点。
⑥ 試算② — 外科系軽症者への旭川モデル適用(福岡市データ)
軽症者は外科系の割合が有意に高い(p<.001)
軽症者 vs 全体(外科系の割合)
軽症者
27%
27%
全体
22%
軽症者の主要疾病
外科系
27%
その他
26%
脳疾患
16%
消化器系
12%
呼吸器系
8%
カイ二乗検定でp<.001 → 軽症者に占める外科系の割合は統計的に高い。外科系は視覚的に判断しやすくオンライン診療との親和性が高い。
外科系軽症52,831件に適用すると 23,404件削減
52,831
外科系軽症(全データ)
52,831件
× 44.3%
23,404件
削減可能(全体の4.6%)
効果指標数値
出動費用削減5.27億円
※費用を通常の半額22,500円で試算
現場到着時間(解放)約133日分
病院到着時間(解放)約520日分
外科系軽症だけに限定しても年5億円超・救急隊員133日分のリソース解放が見込める。
オンラインで対応しやすい症状が多数含まれる
✂️ 切り傷・擦り傷 🦵 軽度打撲 🦶 捻挫 🐝 虫刺され 🔥 軽度やけど
📋 今後取得したいデータ:外科系軽症の詳細区分(病名・症状コード)。これにより「オンライン対応可能な件数」をより精緻に推計できる。
🎯 知りたい情報:視覚的情報から非緊急性をどの程度判断できるか → 実際に削減できる件数の具体的数値化。
⑦ 提案 — オンライン診療の導入とブラッシュアップ
旭川市モデルを外科系軽症者に拡張・最適化する
01
119番受付と並行したオンライン診療の制度化
出動義務を満たしつつ、ビデオ通話で医師が症状を確認。緊急でなければUターン可能なフローを正式に整備する。
旭川市実証済み
02
外科系軽症への特化運用
外科系は視覚的診断との親和性が高い。切り傷・打撲・捻挫など、スクリーニングしやすい症状群から先行導入する。
χ²検定で有意
03
緊急度判定フローの標準化
浜松市データをもとに、通報段階・現場段階・医師段階の3段階で緊急度を再評価する標準フローを構築。過剰出動を構造的に防ぐ。
浜松市データ活用
04
外科系詳細データの取得・分析
「外科系軽症の内訳(病名・症状コード)」が取得できれば、オンライン対応可能件数をより精密に試算できる。次フェーズの優先課題。
今後の課題
3つのシナリオで効果を比較
シナリオ対象削減件数費用削減
A: 非緊急のみ 浜松比率6.7% 6,712件 3.0億円
B: 外科系軽症
旭川モデル
外科系×44.3% 23,404件 5.3億円
C: 非+低緊急全体 浜松比率48.2% 48,287件 21.7億円
核心メッセージ
軽症者の45%という「見えているムダ」を、
オンライン診療で構造的に解決できる。
旭川市の実証(44.3%Uターン)は、法的枠組みの中でもオンライン診療が機能することを証明した。外科系軽症への特化適用だけで年間5億円超の削減が可能であり、さらなる詳細データが揃えば最大21億円超のポテンシャルがある。